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読書感想文 その2 | ||
好きな作家とは限らないが、印象に残った作家のことを書いてみる。 | ||
大藪春彦 | ||
たぶん、「汚れた英雄」を知ったのは、出入りしていたタイヤショップ「ウルフ」の社長北野元氏がモデルだと言われたからだと思う。 コンチネンタルサーカスという言葉もこの本で知り、国際GPのことも多くはこの本で知ったと思う。かなりの大部を2週間とかからずに読み切った記憶がある。 当時は、就職したばかりで、同期でバイクに乗る仲間を集めてお茶目をしていた。その仲間に回し読みして、彼らもかなり熱中したはずだ。「心臓が口から飛び出しそうになった」は仲間内の流行文句になった。そういう状況を同時期に実体験していたのは、会社員としてあるべき姿ではないだろうが。 ひとつの作品を読んで気に入るとその作家だけを集中して読む癖があるのだが、「汚れた英雄」にはまった割に、他の大藪作品を呼んだ記憶がない。松田優作が頂点に居たころ映画に刺激されて「金狼」のひとつくらい手にした気がするのだが読了したかどうかさえ覚えていない。 その辺がひっかかって、適当に探してきた「凶獣の罠」を最近読んでみた。 主人公のF1レーサー(なんとなく「汚れた英雄」にも近い)が、都庁ビルを横目に走るという最近の設定なのに、高級スポーツカーを駆ってする200km/hのチェイスを超人技というタッチで描いているのには照れてしまった。中央道の高尾−大月あたりのワインディングのことではあるが、200km/hを超えるのは大月以降の直線でだ。クルマの常識ならいまだにそうなのかも知れない。だが、バイクでは..... とにかく銃器だろうが、スニーカーだろうが、かならずブランド名つきで登場する。「リンスキンL」で肛門清拭するのが主人公の日課である。 映画の007のように「今、引き金引いてればシリーズは終わるのに」というアホな瞬間がないのはすばらしい。その反面、主人公は躊躇なく敵(? 不要な人物)を殺しまわる。ハードボイルドの世界で延命する正しい方法だ。とびきりいい女もたくさん出てくる。ブランド志向が加わったセックスと暴力。ファンサイトもあるようなのであえて敵を作る気もない(きっと問答無用で気が付いたらガーバーのホールディングナイフで消されているのだろう)けど、ヨード卵のオムレツが好きな自分向きではないらしい。 映画の「汚れた英雄」は別の作品だとしか思えない。平さんのライディングシーンだけが目に残っている。念のため草刈正雄は嫌いではない。 | ||
森茉莉 | ||
森鴎外はさほど好きではない。嫌いでもない。 しかし、その娘の森茉莉は好きだ。 なにが好きとかどの作品が好きとかではなく、エッセイでも小説でも、お嬢様の生活が作品の向こうから伝わってきて許せてしまうというのだろうか。 そういえば高島屋とか千疋屋とかブランドも出てくるがそこがいいのである。 全作品がどのくらいあるかも知らないが、見つければ買う。買えば、ほのぼのとする。それが悲恋の物語であっても。それは、育ちの問題で、目の前にいたら居たたまれない人かも知れないが、どんな文章を通してでも、文章に描かれた物語より前面に出てきてしまう作家が好きなのだ。 漱石といい森茉莉といい、好きな作家には批評眼がないのかもしれない。 |